2016年に販売終了してからかなりの年数が経過したIC-R75ですが、オークションでの購入を考えている方がいらっしゃるかもしれないので、今さらですが既出の記事と併せてインプレを書いてみます。
尚、使用画像は手持ちのICOMカタログからの利用です。
ICOM最後の短波受信機
ICOMの短波受信機と言えば1982年発売のIC-R70から始まりIC-R71、IC-R72と来て4代目のIC-R75が1999年に発売され、最終的に2016年に生産終了となった今となっては懐かしのシリーズです。
私のIC-R75は、2009年に本体価格79,800円、そこにオプションフィルタ FL-257(15,850円)、受信用DSPユニット UT-106(9,660円)を組み込んだ計105,000円で購入したものです。
IC-R75の特徴は
この受信機ならではの特徴としては、
- 受信可能周波数が100kHz~30MHzの長中短波領域だけでなく、50MHz~54MHzまでの領域の受信が標準で可能である。
- 液晶画面が広いため、周波数表示やSメーターが大きく見やすい。
- IF段のフィルタが標準装備とオプションで多数用意されている。
- DSPユニット(オプション)により、アナログの音声信号をデジタル処理してノイズ成分を除去したり(ノイズリダクション)、ビート音などの単信号を除去する(オートノッチフィルター)ことができる。
- オプションのFL-257フィルター(帯域幅3.3kHz)を入れた上でSSBモード受信を行うと(SSBゼロビート受信)、上側周波数又は下側周波数をかなりきれいにカットしてくれた上、音声もかなり聞きやすいので、混信除去にかなり有効である。
なのでこの受信機は基本的性能も高いのですが、本領発揮させるためにはDSPユニットとFL-257フィルターのオプションを是非導入しておきたい所です。
操作性の良さ
使い勝手は総じて良い受信機です。ツマミやボタンの数が多い受信機ですが、今時の受信機やアマチュア無線機と違い1ボタン1機能なので使い方がわからないということはほぼありません。
また前面パネルにあるテンキーの存在は周波数をダイレクトに入力する機会の多い短波受信の場合やはり非常に便利です。
VFOの切替機能は無いのですが、メモリーの書き込みがワンタッチで行える上、通常受信とメモリーモードがボタン一つで切り替えられるのでほぼVFO切替と同じように使うこともできます。
信号強度調整、雑音除去、混信除去機能が充実している
上記の特徴でも書いたオプションを導入した上での受信性能が、約10万円の受信機としては非常に充実しています。
これに関連した操作系では
- 受信感度調整(RF)ツマミ
- ツイン・パスバンドチューニング(TWIN PBT)ツマミ:ICOM独自の混信除去機能
- 受信モードボタン:SSB(USB,LSB)、CW、AM、FMのモード切替
- IFフィルターボタン:装備されているフィルターからワイド/ノーマル/ナローを選択
- 自動利得調整(AGC)ボタン:ファストとスローを選択
- ノイズブランカ(NB)ボタン:パルス性のノイズ除去
- オートノッチフィルター(ANF)ボタン[オプション]:ビート音の除去
- ノイズリダクション(NR)ボタン[オプション]:受信したアナログ信号をデジタル処理して信号成分のみ取り出す
- アッテネータ(ATT)ボタン:強信号を20db減衰
- プリアンプ(P.AMP)ボタン:受信信号の増強(2段階)
と並べてみるとかなり豊富で、TECSUNなどのポータブルラジオとは一線を画すのはさすが通信型受信機。
特にIFフィルターについてはオプションのFL-257を導入している場合、9MHz帯が2種類、455kHz帯が4種類のフィルターから自由に組み合わせてワイド/ノーマル/ナローの実装が可能で、かなり細かい設定をとることができます。
音はそれ程悪くない
販売当時この受信機についてよく言われていたのが音の悪さ。
スピーカーが直径3cmくらいと小さく、音の設定が固めな上トーンコントロールがないので、決して聴きやすいと言えないのは確かなのですが、個人的にはそれ程悪いとも思っていません。
スピーカーが前面に設置されているので了解度自体は決して悪くありません。外部スピーカーかヘッドホンを使えば改善されるレベルで、フィルターをワイド(私の場合IFフィルター9MHz帯が15kHz、455kHz帯が6kHz)に設定すると、ごく普通のラジオの音として聴くことができます。
戦闘力とても高し
購入当時は他のAOR AR7030、日本無線(JRC) NRD-545、ドレークR-8などの受信機と比較して特段優れている受信機という印象はなかったのですが、今となってみるとこれだけの機能と性能を約10万円で実現していたのは素晴らしいことでした。
特に混信除去機能と雑音除去機能の充実度はBCL心をくすぐりますね。最新の受信機やアマチュア無線機でもこれらの機能は完全ソフトウェアで実現されていると思いますが、アナログとデジタルのハイブリッドで構成されたIC-R75は、2000年代前半ならではの魅力です。
私のIC-R75は、すでに購入から10年以上の時が経ちますが不具合、劣化共に全く見られません。見た目的にもボタンの表示が薄くなるということもなく非常に良好ですので、オークションなどで2010年以降に購入されて大事に使用されたものであれば入手しても問題ないように思います。
ただし、入手時にはDSPユニット(UT-106)とオプションIFフィルター(FL-257)が組み込まれているかどうかは必ず確認してください。
これらのオプションが無くても充分戦闘力の高い受信機ですが、UT-106がないとノイズリダクションボタンとオートノッチフィルターボタンが機能しません。せっかくあるボタンが使えないというのはたぶん入手後、結構がっかりすると思います。
またFL-257についは、こちらも無くても受信に支障はありませんが、上記の特徴にも書いたSSBゼロビート受信の効果を最大限に発揮するには、このフィルターがあった方が良いです。
たぶん私が購入したころ(2009年)は、これらのオプションをセットで販売するのが普通だったと記憶しているので実装されている受信機は多いと思いますが、安くするためあえて組み込んでいない受信機もあるかと思いますので入手時は要確認です。
ICOMからもこれらのオプションは販売終了となっているので、どうしても入手したければこれらもオークションで手に入れて自分で筐体を開けて取り付けないとなりません。
もしオプションが組み込まれた状態の良いものが見つかったら、是非入手して楽しんでみてください。