今、国内で手に入る10万円以上(で100万円以下)の高級短波受信機が絶滅状態となった今、もう少し範囲を広げて高級広帯域受信機は、どうなっているのでしょうか?
国内で手に入りそうなものを、発売時期の順に挙げると以下の6機種だったので、ざっと調べてみました。
結果、ICOM IC-R8600が欲しくなってしまったのでした。
(5番目のAOR ARDV10のみがハンディー機で、後は据え置き型受信機です。尚、参考価格は2022年10月現在の楽天市場調べです。)
- AOR AR5001D 発売時期:2010年 参考価格:327,963円
- AOR AR6000 発売時期:2013年 参考価格:600,926円
- AOR ARDV1(デジタル無線対応) 発売時期:2015年 参考価格:149,800円
- ICOM IC-R8600 発売時期:2017年 参考価格:223,056円
- AOR ARDV10(デジタル無線対応) 発売時期:2018年 参考価格:124,000円
- AOR 5700D(デジタル無線対応) 発売時期:2020年 参考価格:\387,200-
広帯域受信機と言うと概ね100kHz~数千MHz程度の範囲を受信可能範囲として、一般放送だけでなく業務用無線などを受信対象とする受信機となるでしょうか。
また広帯域受信機の場合、通常のアナログ電波を受信できるだけでなく、現在多くの業務無線で用いられているデジタル暗号化された電波を受信できるというのも大きな特徴となっています。
ただ私は業務無線受信に関してはエアバンド受信以外、ほぼ興味がないので短波受信機としての機能がどの程度あるのかを中心に見てみます。
発売時期順に機種ごとの特徴を挙げてみます。
AOR AR5001D(2010年)
- 受信範囲:40kHz~3150MHz 大きさ:220(W)×97(H)×304(D)mm 重量:5kg
シリーズとして見れば1988年発売のAR3000~1996年発売のAR5000やAR5000A+3などを経てのDSP版受信機として存在しています。その基本性能及び信頼性は業務用受信機として多く使われているように非常に高く堅実な受信機です。
ただ基本設計が非常に古くAR5000の時点で見ても約25年前になるので画面表示もあまり高さの無いモノクロ液晶ですのでスペクトラム表示もかなり見づらそうです。
AMにおける選択度切り替えも手動設定でできるのですが、ボタン操作はAR3000とほぼ同じ方式でお世辞にも使いやすいとは言えません。
今でも30万円を超えるこの受信機を選ぶのは、その堅牢性と信頼性を重視する本当の業務用としてではないでしょうか。
AOR AR6000(2013年)
- 受信範囲:9kHz~6GHz
上記のAR5001Dのさらに2倍近い値段で超える超高級受信機です。にもかかわらず外観は全く同じという不思議な存在。
機能的には、カタログを読んでも半分くらいは難しすぎてよくわかりません。
どんな業務に使うのかはよくわかりませんが、完全に業務用であって個人が趣味で買うものではないのではないかと思います。
AOR ARDV1【デジタル無線対応】(2015年)
- 動作範囲:100kHz~1300MHz(保証範囲18MHz~1300MHz) 大きさ:178(W)×50(H) ×215(D) mm 重さ:1.5kg
民生用のデジタル無線対応受信機としてはかなり初期の受信機と言えるのではないでしょうか。
この時期AORの短波受信機AR7030の後継機種が出るのではないかと一部で噂されていて、この機種がそうなのではと言われていたのですが、出てきたのはデジタル無線対応の広帯域受信機だったのでガッカリした記憶があります。
動作範囲は100kHzからですが、保証範囲は18MHzからになっていますので短波受信にはそもそも向かない受信機です。
また表示画面も小さめで表示も読みづらい(特に数字)、ボタンも他のAOR系受信機と同様のファンクションボタンを多用した操作になるので、最近同じAORのARDV10が出た今この受信機を選択する意味を私は見出せません。ごめんなさい。
ICOM IC-R8600(2017年)
- 受信範囲 10kHz~3000MHz 大きさ:220(W)×90(H)×230(D)mm 重さ:4.3kg
今や一般人の購入できるICOMの唯一の据え置き型受信機です。もちろん上位には受注生産で180万円のIC- R9500がありますが、あれはもう完全に業務用ですから横に置いておきます。
デジタル無線にも対応していますが、メインはアナログモードの受信となっていてVHF、UHF帯だけでなく短波帯にもしっかり対応しているようです。
今回改めて見直してみるとアナログ対応の受信機としては、現在国内で手に入る趣味用受信機としては事実上の最高レベルの受信機ではないかと思われます。
機能として、感度調整関連(プリアンプ機能、アッテネータ機能、AGC機能)、混信除去関連(デジタルツインPBT、AMモードの帯域フィルタ3段階切替)、ノイズ除去関連(ノッチフィルタ、ノイズブランカ、ノイズリダクション)、その他短波帯でも有効な機能が満載です。
その上、高精細・高速度のリアルタイムスペクトラムスコープ搭載、音声録音可能、LAN経由でリモート操作可能と至れり尽くせり。
2017年発売なので最新とは言えませんが、それでも充分今時の受信機。
外部電源として別途安定化電源か別売りのACアダプター(¥4,000-)が必要になりますが大した問題ではないでしょう。
20万円を超える価格が唯一のネックでしょうが、販売している内に手に入れておきたいと思わせる受信機です。
(2023.1.27追記)
残念ながら今現在、通販ではどこのショップでも【予約待ち】状態になっていて、いつ手に入るかは神のみぞ知る状況です。人気の受信機、無線機は全般的に品薄状態で同じICOMのアマチュア無線機IC-705も予約待ち状態が続いています。
(2024.11.2追記)
結構色々なショップで入手可能な状態になっています。値段はやはり20万円以上しますが、う~ん欲しい、完全に宝の持ち腐れになるけど欲しい。
AOR ARDV10【デジタル無線対応】(2018年)
- 受信範囲:100kHz ~1300MHz 大きさ:65(W)×137(H)×41(D)mm 重さ:0.42kg
今回取り上げた中で唯一のハンディー機ですが、ハンディー機で10万円超えはすごいですね。
値段的には高級機と言って良いので取り上げましたが、明らかに短波受信向きではありません。この受信機の売りは多彩なデジタル復調モードにあり、それをハンディー機で実現した点がすごい所でしょう。
AOR AR5700D【デジタル無線対応】(2020年)
受信範囲:9kHz ~3700MHz
前記のAR5001D及びAR6000と全面パネルのデザインは全く同じ。これだけ高価な受信機なのに、少しは差別化を図ればいいのにとも思いますが経費削減の結果でしょうか。
カタログを見る限りAR5001Dをデジタル無線受信対応にした他、若干の機能拡張が行われているようですが、こうなるとAR5001Dの存在意義が良くわかりません。
この値段でモノクロ液晶のこの機種も、この機種でなければというデジタル無線受信への格別のこだわりがない限り、素人が手を出す受信機ではないでしょう。
(結 論) ICOM IC-R8600一択!
6機種並べてみましたが、短波受信を見据えて一般人が購入しても良いかと思われるのはICOMのIC-R8600のみと言えそうです。
他の機種は基本設計時期が若干古いのとデジタル無線受信がメインターゲットになっているということで、短波受信を考えた場合には手を出すべきではないでしょう。
逆に言うとIC-R8600は短波受信、VHF帯及びUHF帯受信のアナログ受信については、高い性能と機能を有していてこれ1台あれば、他に短波受信機もエアーバンド受信機も必要ないでしょう。
受信機能のみで20万円超えですから簡単に手を出せる代物ではないですが、販売しているうちに手に入れておきたいと思わせる受信機です。
高価な完全業務用受信機を除いた、趣味用の据置型短波受信機としての現時点での最高峰マシンを発見した気分でした。欲しい。