1970年代、80年代のBCLラジオの中でも、とても子供には手が出なかった高級ラジオがいくつかのメーカーから出されていたので、それらについての昔話です。

まずはSONYの高級ラジオについて

ワールドゾーン23(CRF-230 (B))

発売時価格:198,000円 発売時期:1972年

SONYのBCLラジオと言えばスカイセンサーシリーズ(型番 ICF)が有名ですが、こちらはその上位バージョンと言ってよいワールドゾーンシリーズのワールドゾーン23(CRF-230(B))。

BCLラジオの機能としては、感度切り替えスイッチ、選択度切り替えスイッチ、AGCつまみ、USB及びLSB対応のBFOつまみ、など必要なものはすべてそろっています。

ただBCLラジオとして重要となる周波数読み取り機能については、かなり大雑把にしか読み取ることはできなさそうで短波帯の目盛り単位が50kHz単位になっています。

これだけの高額機種でも当時の技術ではこれが限界だったのでしょう。

発売年がスカイセンサー5800の発売される1973年の前年なので、この部分についてはスカイセンサー5900の発売される1975年まで待たなければいけないようです。(5900では目盛り単位は10kHz単位)

それと音質にはこだわりがあるようで大型スピーカーが2個付いた上で、トーンコントロールは高音、低音の2個が付いているので、強力に聞こえる局をじっくり聴くといった使い方が似合いそうです。

ワールドゾーンシリーズは調べた限りで型番としては、

  • ワールドゾーン9(CRF-5090):¥54,800
  • ワールドゾーン13(CRF-200):¥79,800
  • ワールドゾーン32(CRF-320):¥320,000
  • ワールドゾーン33(CRF-330K):¥420,000

以上、ワールドゾーン23と合わせた5機種については、カタログなどではっきりとワールドゾーンを名乗っています。

他にもCRFという型番には、

  • SONY唯一であろう通信機型レシーバーを銘打っていたCRF-1(¥248,000)
  • ファクシミリ受信&プリンター搭載のCRF-V21(¥650,000)
  • ワールドゾーンシリーズと同系列のデザインだが、その記述が見つからないCRF-150、CRF-160、CRF-180、CRF-220

あるいは海外向けなどを含めれば、他にもあるのかもしれません。

(1980年版BCLマニュアルより)

値段で言えばこの次のワールドゾーン32の方が高価ですが、個人的には何故かこちらのワールドゾーン23の方が、何と言うか高級家具的あるいは高級工芸品的な凄みを感じてしまいます。(高級家具的ラジオには松下のRF-8000がありますが、その紹介はまた後日)

写真では分かりづらいですが何と言ってもデカイ。横45cm、縦33cmで重量13.5kgで、私など迂闊に持ち上げたらギックリ腰になりそうな超弩級のラジオです。

上の写真でもわかるように前面を覆うパネルが付いていて、これを付けるともはやラジオとは思われない機材感がたまらないです。(昔のミシンとか8ミリ映写機と共通するデザイン)

ただ残念ながらネットを探してみても本体の写真はたくさん見つかるのですが、当時のカタログや資料などは殆ど見つからず詳しいことはあまりわかりません。

当時スカイセンサーシリーズは、家電量販店でも展示されていましたが、ワールドゾーンシリーズは見た記憶がありません。あるいは見ていたのだけれど、あまりにも雲の上の値段に記憶から弾いていたのかもしれませんが。

ワールドゾーン32 (33K) (CRF-320 (330K))

発売時価格:320,000 (420,000) 円 発売時期:1977年

BCLブームの最高潮の時期に発売されたSONYのいわゆるBCLラジオとしては頂点に君臨する存在です。33Kは、32にカセットが付いたもので、スカイセンサー5900に対する5950のようなものです。

ワールドゾーン32は前のワールドゾーン23とは違い高級家具的な感じは微塵もなく、ほぼ同時期に発売されているICF-6800の上位バージョンと言った出で立ちです。大きさ、重量はワールドゾーン23とほぼ同じのこちらも超弩級ラジオです。

こちらも現物は目にしたことはないのですが、オークションサイトを見てみると結構出品されているので持っていた人はいたのですね。

カタログでスイッチの一つ一つの機能を見てみると、あまりマニアックなものは付いておらずICF-6800とほぼ共通と言って良いでしょう。

ただ触ったことはないですがたぶん一つ一つのダイヤルやスイッチの操作感触や作り、あるいはオーディオ部分などが上級になっていると思われます。

ワールドゾーン23とは発売時期でわずか5年しか違いませんが機能、デザイン共に大きく進化したことがわかります。そしてこの3年後には一切のダイヤルを廃したICF-2001が発売されるわけで、この時期のSONYがいかに短波ラジオに力を入れていたか、まさにSONYの黄金時代でした。